石破茂会長石破 茂 です。

衆議院での予算審議は、地方公聴会・中央公聴会も終えて来週月曜日には委員会での採決後本会議で可決されて予算案は参議院に送付される見通しです。

噛み合わない議論や、小学校の学級会の如き野党と政府側の感情的な応酬にうんざりする中で、中央公聴会における公述人の意見陳述はなかなか聞きごたえのあるものでした。中でもBNPパリバ証券投資調査本部長の中空真奈女史の陳述は、実務に通暁した人ならではのもので、高橋洋一陳述人との対称もとても印象的でした。ネットでご覧になれますので一見の価値ありと思いますが、議員と政府側のやり取りもこのように中身の濃いものであればどんなに良いことかと思いました。

最近、閣僚答弁に原稿棒読みのものが目立つようになったことはとても残念です。確かに失敗も無く安全ではありますが、官僚たちが書く霞が関文学的な答弁案は、正確を期すあまりに面白くもなんともなく、そのまま聞いただけでは何が言いたいのかよくわからないように作成されています。

これを事前に丹念に読み込んで咀嚼し、自分の言葉に置き換えて原稿を見ないで答弁してこそ初めて相手側に伝わるのであり、その技術向上に政府・与党全体として更に努めるべきものと思います。

もっともこれはこれで答弁する側にとっては大変な負担です。質問が出揃うのは往々にして前日夜遅く、官僚たちが徹夜で答弁資料を作成してそれが出来上がるのが午前4時過ぎ、これが議員宿舎などに居る大臣の手元に届くのが午前5時、午前7時からの答弁打ち合わせで直すべきところを指示して、原稿が最終的に完成するのは午前9時の委員会開会直前というのが通例ですから、国会開会中は大臣たちは全く時間的・心理的余裕がありません。せめて質問通告がもう少し早ければもっときちんとした答弁が出来、充実した審議になるのに、と思うのですが、なかなかうまくいかないものです。

先日の北朝鮮のミサイル発射の折、訪米中でトランプ氏の別荘に滞在していた総理大臣の緊急会見の横にトランプ大統領が立ち、日本政府を断固支持する旨の発言をしたのですが、「日本を支持する」という部分は原文では「stand behind Japan」であって、日本語訳とは微妙にニュアンスが異なります。「日本がまず第一義的に対応し、米国はこれを背後で支える」。behindという言葉使いはそのような含意ではないでしょうか。

日米安保条約もその書き方はNATO条約などとは微妙に異なっています(NATO条約では米国の対応につき「will assist」となっているが日米安保条約では「would act」など。この点はかつて外務委員会で当時の田中真紀子外相に質問したのですが、当然ながら全くまともな答弁は返ってきませんでした)。

安全保障についてもっとまともで真剣な議論をしなくてはならないことを、今日の毎日新聞佐藤千矢子論説委員のコラムを読んで痛感したことでした。

本日の自民党憲法調査会は、上田健介近畿大学法科大学院教授の「参政権の保障を巡る諸問題 投票価値の平等から両院制まで」と題する講演と引き続いての質疑でした。

参議院の一票の価値を論ずるには参議院の在り方そのものに踏み込んだ議論が必要であるという同教授の所論は全くその通りで、これをスルーして結論を得ることは出来ないと思っています。

二院制の妙味はその持つ役割が異なることにこそあるのであって、二院が酷似した選挙制度と役割を有していては、妙味どころか弊害の方が目立ちます。議院内閣制を採る以上、権力を持つ政府とこれをチェックするべき議会の関係は曖昧となり、政府のポスト目当てに権力に隷属する議員が出ることを完全に否定できません。

首班指名に優越性を持つ衆議院はともかく、参議院は権力とは一線を画したインディペンデントな院として見識の高い議論をすべきですし、地方代表の持つ意味を強調するなら地方に関することについては主に参議院で議論をするような工夫も出来るはずです。合区解消のみならず、衆・参でのねじれが生じ、政権が不安定になることを避けるためにも、この議論に結論を出すことが必要です。

今日は「プレミアム・フライデー」とやらで、15時には仕事を終えるようにとのお達しです。

趣旨はわからないでもありませんが、果たしてうまくいくのでしょうか。かつて銀行に勤めていた時も「早帰り日」や「定時退行日」なるものがあったのですが、一部行員はその恩恵に浴しても、管理職などはかえって帰りが遅くなるという事態が発生したことをよく覚えています。世の中はとかく不公平に出来ていて、仕事が集中する人にはさらに集中するという負の側面を無視してはなりません…などと言うのは能率的に仕事がこなせず、「断る勇気」を持たない私の僻みなのかも知れませんが。

週末は、25日土曜日が金沢市自民党国政報告会で講演(午前9時半・内山公民館、午前11時・医王山農村環境改善センター)。

26日日曜日がKAB熊本朝日放送フォーラム2017 「地方創生と熊本 熊本県復興・再生に向けての活路を探せ」でパネルディスカッション(12時半・熊本テルサ・テルサホール、テクノ仮設団地見学(午後3時45分)、阿蘇大橋崩落現場視察(午後4時45分)、熊本県知事など行政関係者・自民党熊本県連との夕食懇談会(午後7時・熊本市内)。

27日月曜日は被災地の視察や御船町議会での講演後に帰京の予定です。

風邪が完全に治りきらないままに無理を重ねたためか、昨日あたりから体調が再び極めて悪くなりました。治癒力も確かに落ちているのでしょうね。

不安定な天候が続きます。皆様お元気でお過ごしくださいませ。

政策コラム執筆者プロフィール
石破茂会長石破 茂 鳥取1区【衆議院議員】
生年月日:昭和32年2月4日
当選回数:10回
学歴:1984年3月 慶應義塾大学法学部卒業
得意な政策分野:安全保障・農林水産・地方創生