八木哲也八木 哲也です。地元の愛知県豊田市・みよし市の地方新聞「矢作新報」(H29.4.28)に掲載された私のエッセイ「時々刻々 No.809」をご紹介します。

【「時々刻々 No.809」 テロ等の組織犯罪防ぐ国際協力不可欠】

「松平の郷はお水取りで春が来る」。ある古老はこう語る。4月15日、松平東照宮で例祭(権現まつり)に参加した。桜は満開、鶯が澄んだ鳴き声で迎えてくれた。松平家25代当主輝夫氏自ら御水取りをされた。小生もご相伴にあずかり、大きな柄杓でご神水を汲む。まるで春を汲み上げているようだった。

定かではないが500年以上も前からこの神事が続いているとか。氏子の皆さんが営々と続けてきたことに頭が下がる。徳川家康が産まれた時に「この井戸の水を早馬で岡崎城に運び産湯にした」と伝わる。家康の天下取りも松平郷の御水取りのおかげかもしれない。

我が家に5人の孫が産まれた時、この神水をいただいて風呂に注いだ。家康にあやかるつもりはないが、せめて健やかに育ってほしいとの思いからだ。

家康が作り上げた太平の世は実に約260年。その政策の一つに鎖国がある。外圧から国や国民を守る政策はトランプ大統領の「アメリカ第一」や、世界各地で台頭する保守主義と共通点がある。ナショナリズムを否定するものではない。しかし今は世界各国と密に関係を保ちながら、自国の独立を維持していかなければ成り立たない時代だ。

国会は「組織的犯罪処罰法(テロ等準備罪法)」議論の真っただ中だ。現在、テロ等の凶悪な組織犯罪が各国で頻発している。日本はどうか。3年後に東京五輪・パラリンピックが迫り、テロ等の組織犯罪を未然に防ぐ国際協力は不可欠だ。

捜査共助や犯罪情報共有などの国際協力を進めるには、国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を締結しなければならない。この条約はすでに、国連加盟国193ヵ国のうち187ヵ国が締結済み。あの北朝鮮ですら締結している。未締結は日本をはじめ11ヵ国のみだ。締結には、条約が求める義務(重大犯罪の実行の合意の犯罪化)を履行するため、今回の組織的犯罪処罰法改正が欠かせない。

今回の改正案では、犯罪主体を「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と明確に限定。その上で「重大な犯罪」に該当するもののうち「組織的犯罪集団の関与が現実的に想定されるもの」のみを規定することによって、当初676だった対象犯罪を277に絞った。かつての民主党も対象犯罪を306にする修正案を提出していた。

「共謀罪」と煽るA紙の世論調査ですら、本法案に「賛成」は44%で「反対」の25%を上回った。Y紙では「賛成」58%で「反対」25%だ。「日本が監視社会になる」と心配される方がいるようだが、決してそのような法案ではない。この法案にかかわらず、常に安全で安心した社会を築いていくことがわれわれ国会議員に課せられた使命だろう。

今月は米国のシリア攻撃とあわせ、北朝鮮問題で日本周辺の安全保障環境が緊迫した。そんななか、松平郷で感じた穏やかな春の訪れ。徳川260年の太平に思いを馳せ、平和や安全、安心の素晴らしさが身に染みた。いつまでも「お水取り」のできる安寧な郷であってほしい。そんな思いが募った。

政策コラム執筆者プロフィール
八木哲也八木 哲也 愛知11区【衆議院議員】
生年月日:昭和22年8月10日
当選回数:2回
学歴:1972年3月 中央大学理工学部管理工学科卒業
得意な政策分野:経済産業 科学技術・イノベーション 文部科学 地方創生