八木哲也八木 哲也です。地元の愛知県豊田市・みよし市の地方新聞「矢作新報」(R2.11.13)に掲載された私のエッセイ「時々刻々 No.980」をご紹介します。

【「時々刻々 No.980」】「デジタル化」日本は周回遅れ

国会議事堂周りの銀杏並木が、金色に変わり始めた。10月26日の国会開会式。議事堂前に参列し、ふと見上げた空は雲一つない秋晴れだった。静かにお車が入る。車窓をみると、純白のマスクをされた陛下が軽く会釈をされた。たったそれだけの瞬間、不思議と凛とした空気に包まれた。

第203回国会が始まった。第99代内閣総理大臣菅義偉としての初舞台になる。所信表明演説に期待を込めて拝聴した。自民党総裁選挙の際の討論会や、新内閣の陣容を見て、私は勝手に「前政権を引き継ぎ、堅実な実務型の政治だろう」と想像していたが、いい意味で裏切られた。「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」。首相は宣言した。

場内は一瞬どよめきが起こった。これは国内だけでなく、世界に向けての宣言になる。既に約120か国がこうした宣言をしており、主要7か国(G7)で残るは日本と米国だけだった。遅きに失したというのは簡単だが、それでも着実な前進だ。

昨年来、小泉進次郎環境相と一緒に仕事をさせてもらった。大臣はゼロカーボンシティに向け積極的に自治体に働きかけた。大臣室に大きな日本地図が貼ってあり、そこには宣言した自治体がチェックされている。豊田市もみよし市も宣言してもらった。現在166の自治体、人口7883万人、日本の65%以上が宣言したことになる。梶山経済産業相とはCO2排出量が多い石炭火力発電の将来像について覚書を交わしている。

首相の演説を聞きながら、昨年来のこうした動き一つ一つを思い出した。全てが今回の宣言に繋がっている。首相はいま成長戦略の柱に「経済と環境の好循環」(環境省では「環境と成長の好循環」)を掲げている。これから社会も経済も大きく変わっていく。自動車産業も脱炭素化に向けて、急激に電動化に舵を切らねばならない。裾野の広い産業だ。今後も日本の成長の先頭を走り続けてほしい。渡辺元トヨタ自動車社長が「走れば走るほどきれいな空気を出す車を作ります」と話していたことを思い出す。もう夢物語ではない。

首相の演説でもう一つ、大きな柱だったのは、来年設置をめざすデジタル庁だ。今回の新型コロナウイルス禍で、日本は行政も民間もデジタル化が遅れ、脆弱性があることが露呈した。世界と比べて「周回遅れ」ともいわれる。マイナンバーカードを2年半のうちに普及させ、行政、医療、教育、仕事等のデジタル化を進めるという。私も賛成だ。

首相は「自助・共助・公助」「絆」とも述べた。自助・共助・公助は順番や段階を指すものではない。それぞれ同時に存在している。補完関係だと意識して追求することが肝要だ。

首相は安倍晋三前首相と同様「拉致問題は最重要課題」と唱えた。だがいまだに進展は見えない。今年6月5日、横田めぐみさんの父・滋さんが亡くなられた。国会議員になって以来、ブルーリボンバッジをつけてきたが、自分の非力と被害者の皆さんに申し訳ない気持ちでいっぱいだ。その時以来、バッジを外した。

政策コラム執筆者プロフィール
八木哲也八木 哲也 愛知11区【衆議院議員】
生年月日:昭和22年8月10日
当選回数:3回
学歴:1972年3月 中央大学理工学部管理工学科卒業
得意な政策分野:経済産業 科学技術・イノベーション 文部科学 地方創生