石破茂会長石破 茂 です。

日本国憲法第1条(「天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」)により、天皇陛下のご地位は国民の意思によるものです。

憲法第41条(「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」)によって、形式論的には国会議員が国民の意思を代表するのであり、いかなる法形式を採るかは別として、ご譲位に関する法律が定足数を充たす衆参両院出席議員(総議員ではない)の過半数によって可決され、成立すればよい、ということになるのでしょうが、そもそも本当にこれを「国民の総意」としてよいのか、全会一致でなければ「総意」とはいえないという考え方も、憲法改正の発議と同じく3分の2で足るとの考え方もありましょう。

昨年8月8日、天皇陛下がそのお気持ちを全国民に対してビデオメッセージという形でご表明になったのは、主権者である国民一人一人に考えて欲しいとの大御心だと畏れながら拝察します。

自分の不勉強を棚に上げて言うのですが、小学校から大学に至るまで、憲法の天皇陛下に関する条文も、新旧皇室典範も私はほとんど学ぶことが無く、議員になってからも陛下のお気持ちのご表明までは通り一遍の上辺だけの知識しか持っていませんでした。お気持ちを承って以来、不充分ながら自分なりに勉強してきましたが、ことの重大性と緊要性に恐れおののくばかりです。

今日までこの課題に正面から向き合おうとしてこなかったことを、長く国会議員を務めてきた者として陛下と国民に心から深くお詫びしなければなりません。本当に申し訳のないことでした。

新年の多くの会に出席し、挨拶を聴いてきましたが、この課題に触れる人は私の知る限り皆無でした(馴染まない雰囲気を感じながらも私自身はなるべく触れるようにしてきました)。

少なくとも、与野党を問わず国会に議席を持つ者は、この課題の持つ意味をそれぞれの選挙区において広く語り、理解を得、意見を聞く責任を有していると思います。それは日本国の在り方そのものを国民それぞれが考えることであり、戦前から戦後を通じて多くの先人たちが生命を賭して護ろうとしてきたものを次代に引き継ぐことでもあります。

「手続きが膨大」「時間が足りない」「政局にすべきではない」などに藉口することなく、間違いなくこの課題に誰よりも真剣に向き合ってこられ、最高の権威であらせられる陛下の大御心に沿うべく、真摯に、誠実にお応えしなくてはなりません。

陛下はお言葉の中で「天皇が(日本国の)象徴であると共に、国民統合の象徴としての役割を果たすためには、天皇が国民に、天皇という象徴の立場への理解を求めるとともに、天皇もまた、自らのありように深く心し、国民に対する理解を深め、常に国民と共にある自覚を自らの内に育てる必要を感じてきました」と仰せになっておられます。これを今上陛下ご一代限りのものとして捉えてよいとは、私には思われません。

「静かに議論する」ということは「議論を行わない」ことではありません。本日の国会開会式に臨まれた天皇陛下のお姿に接し、そのように深く思ったことでした。

日本時間明日未明、ドナルド・トランプ氏がアメリカ合衆国大統領に就任致します。日高義樹氏の著書「核の戦国時代が始まる 日本が真の独立国になる好機」(PHP刊)によれば、同氏は「日本は第7艦隊の艦船の建造費の一部は分担すべき」と述べているそうです。

最新鋭航空母艦「ジョージ・ブッシュ」は建造費だけで約7300億円、これに搭載機の価格を足せば一兆円は優に超えるものと思われ、分担率や艦艇の寿命にもよりますが、第七艦隊全体の一部負担とすれば相当の額になります。

日米同盟の長い経緯を踏まえた者からは発想もしえないディール的な思考をする可能性も否定は出来ません。このような考え方が第7艦隊のみならず海兵隊を含む四軍すべてに及べばどうなるのか、荒唐無稽ですが可能性がないと言い切る自信はありません。ことほど左様に、我々は今まで考えても来なかった課題に直面せねばならないように思われます。

日高氏の所論には賛同できない部分もありますが、政界に限らずアメリカの内情に通暁する卓越したジャーナリストの一人であり、いつも大いに啓発されます。昨年5月に私が訪米する途上、偶然機内でお目にかかった際に、トランプ氏当選の可能性について言及しておられたのが極めて印象的でした。

週末は、21日土曜日がクニエダ(株)生産技術高度化施設竣工式・昼食会・内覧(正午・滋賀県守山市)、JAおうみ富士職員との意見交換会(午後2時・ファーマーズマーケットおうみんち)、川西いちご園見学、立田地区・地区計画について自治会役員会との意見交換会、野洲川歴史公園視察(午後3時以降・守山市内)、「地方創生で守山を元気にする会」で講演(午後5時・ラフォーレ琵琶湖)。

22日日曜日は「守山を元気にする会」関係者との朝食意見交換会(午前7時半・同)、という日程です。

都心は小雪が舞う天気となりました。皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

政策コラム執筆者プロフィール
石破茂会長石破 茂 鳥取1区【衆議院議員】
生年月日:昭和32年2月4日
当選回数:10回
学歴:1984年3月 慶應義塾大学法学部卒業
得意な政策分野:安全保障・農林水産・地方創生