石破茂会長石破 茂 です。

おかげさまで11期目の任期を賜りました。定数465人の衆議院議員全体では、最多当選の小沢一郎氏(当選17回)から数えて14番目、自民党では野田毅氏(当選16回)から数えて11番目に多い当選期数となり、31年という時の長さをしみじみと感じます。

当然のことながら長きが故に尊からずなのであって、今回の公約に掲げた「地方創生と安全保障の確立」と「より謙虚で誠実・正直な自民党の実現」に向けて具体的な成果を着実にあげなくてはなりません。

選挙期間中、初日と最終日の数時間しか選挙区には居られなかったのですが、10万6425票、得票率にして全国第2位の83.6%というご支持を頂くことが出来ました。

投票日当日の鳥取県地方は大雨・暴風警報が発令される大荒れの天気でしたが、ご高齢の方や身体のご不自由な方が投票所に足を運んでくださっているお姿を見て、胸が熱くなる思いでした。亡父が県知事時代、「何の義理も恩もないのに儂に投票してくれる人が23万人もいるということが、どれほど重くて有り難いことかお前にわかるか」と言っていたのを思い出したことでした。

当選6回以降、選挙期間中不在のことが多いのは誠に心苦しく、鳥取一区の有権者の皆様には毎回申し訳なく思っております。選挙期間中居られないのはやむを得ないとしても、平成大合併前の旧町村単位での国政報告会の頻度を次回からはもう少し上げなくてはならないと思っております。

また亡父の話で恐縮ですが、知事選でも参院選でも、圧勝が確実なのにも拘らず、選挙では一切の手抜きをしない人でした。

「昭和37年の県知事選挙の時、青谷境から選挙カーに同乗し白兎海岸を過ぎた頃『オイ安蔵(アゾウ)に回ってくれ』と言い出された。安蔵といえば今は鳥取市でも、もと気高郡明治村の岡山県境に接する寒村、しかも戸数数十戸許りの山奥の集落。国道9号線から入ると2時間はタップリかかる。これでは今日の日程が消化出来ん、選挙後にされては!と言うと『いやあんな県民こそどうでも救ってやらねばならんでなァ』私は目頭のうるむ思いで車を回すよう命じた」

西尾泰章氏(元鳥取県議会副議長・故人)はこのように「石破二朗回想録」に書いてくださっていますが、この気持ちを決して忘れてはならないと改めて自戒しております。

東京都議会議員選挙との大きな違いは、街頭演説の際、政策論に最後まで多くの方が耳を傾けて下さったことでした。勿論街頭の僅か10分あまりの演説で、細かな政策を語ることは困難でしたが、税と社会保障の一体改革の必要性、大胆な金融緩和の成果とその限界、地方創生の理念と実行策、人口オーナス期における経済政策と労働政策の在り方、北朝鮮の脅威に対してこれを外交的に解決するためにこそ必要な抑止力向上の方策、について出来る限り具体的かつ平易に話すよう心掛けました。反省点ばかりが多くあります。

10分あまりの時間で、なぜこの候補者に一票を投じて頂きたいのかをご理解いただくことの難しさを痛感したことでしたが、選挙カーでの街宣活動は別として(うるさくて多くの方にご迷惑をおかけしました)、演説で連呼哀願を繰り返したり、砂糖菓子のように甘いことばかり言うのなら、選挙の意味はほとんどないものと思います。

政策集団水月会の候補者も18人全員が当選を果たすことが出来ました。

愛知11区のように労組が圧倒的な力を持っている選挙区や、高知2区のように野党が一本化した選挙区、更には新潟1区のように立憲民主党が相手の選挙区は極めて困難な戦いでしたが、各地で皆様がご支援下さった賜物です。心より厚く御礼申し上げます。本当に有り難うございました。

結果だけ見れば与党の圧勝に見えますが、総有権者を分母とする自民党の小選挙区での「絶対得票率」は約25%、有効投票数を分母とする「得票率」は47.8%、一方自民党の「議席占有率」は74.8%、というのは厳然たる事実です。小選挙区制度を推進してきた者としては忸怩たる思いですが、これを忘れてはなりません。

民意との乖離を起こすことのないよう、更に努めていく必要があります。

短い期間の中で、憲法もほとんど語ることが出来なかったことはとても残念です。

「軍」という語感に拒否反応を示す方が多いのは確かな事実ですが、これに目を背けるばかりに、本質論である「政軍関係」について全く法的な手当てがなされないことの方がよほど危険なことのように思います。これについて回を改めて論じたいと思います。

この論点につき、「軍人が政治家になってはいけない本当の理由」(廣中雅之著・文春新書)は多くの示唆に富む好著です。是非ご一読ください。

26日木曜日、27日金曜日は大阪市、豊岡市と地方出張が続きます。

28日土曜日は平成29年度自衛隊殉職隊員追悼式(午前10時・防衛省)。

29日日曜日は「時事放談」出演(午前6時・TBS系列・収録)、という日程です。

朝夕はめっきり肌寒くなりました。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

政策コラム執筆者プロフィール
石破茂会長石破 茂 鳥取1区【衆議院議員】
生年月日:昭和32年2月4日
当選回数:10回
学歴:1979年3月 慶應義塾大学法学部卒業
得意な政策分野:安全保障・農林水産・地方創生