石破茂会長石破 茂 です。

陸上自衛隊目達原駐屯地所属のアパッチ・ロングボウ対戦車ヘリコプターの事故には言葉がありません。被害に遭われた神埼市の皆様に元防衛大臣・自民党安全保障調査会顧問としてお詫びとお見舞いを申し上げますとともに、殉職された、技量高く人望の厚かった機長・斎藤謙一2等陸佐と、結婚されたばかりであった副操縦士・高山啓希1等陸曹の御霊の安らかならんことを心よりお祈り致します。

AH-1S対戦車ヘリの後継機として導入したAH-64Dは、当初62機の調達を予定していたのですが、価格があまりに高いことなどを理由に13機で調達が打ち切られました。同時に10個以上の目標を探知し、攻撃の優先順位を識別できるという高性能機なのですが、基本的に対戦車ヘリである以上、敵がどれほどの数で我が国に侵略を加え、それを排除するには何機が必要なのか、我が方の戦車の数と対戦車ヘリの機数の比率はいかにあるべきか等が綿密に計算されて必要な調達数が決定されていたはずです。

事故原因はこれからの調査の結果を待つ他はありませんが、機数が少ない分、稼働率が高くなり現場に過度の負担がかかっていたのではないか、との指摘もあり、この構想に中途まで関わっていた者として、大きな責任を感じています。

装備の調達、人員の確保、運用体制の整備などの予算や、権限を付与する法律の制定など「軍政」の分野は一にかかって政治の責任です(作戦など「軍令」の分野は制服に権限が属しますが、日本ではこれがやや不明確です)。

予算委員会の質疑を聞いていても、スタンドオフミサイルは敵地攻撃能力を有するのか、いずも型護衛艦に固定翼機を乗せれば専守防衛に反するのではないか、等々の質問ばかりで(それも大切な議論ではありますが)、どのような脅威に対してどのような態勢で抑止力を保持すべきなのか、という本質的な議論はあまり聞かれません。

軍事についてささやかな知識を持ち、自らの思いを述べれば、「軍事マニア・軍事オタク・好戦家」のレッテルを張られて異端視される雰囲気はどう見ても異様ですし、危険極まりないことだと思います。「それはお前の不徳の致すところだ」と言われてしまえばそれまでですが、このような雰囲気で本当に必要な安全保障体制が構築できるのでしょうか。

自民党内における憲法の議論で、私が「陸海空軍その他の戦力は保持しない」「国の交戦権はこれを認めない」という第9条2項の削除を主張しているのは、「自衛隊は国際的には軍隊だが国内的にはそうではない」「必要最小限度の実力しか保持しないのだから戦力ではなく陸海空軍でもない」「日本国は交戦権を行使できるが、憲法で禁じられているから、これを『自衛行動権』と称するのだ」などという、摩訶不思議な、一般の方にはまず理解不能な論理が罷り通り、国会の議論が法律細部論に終始している限りは、この国に真に必要な国民的議論が行われないと信じるからであり、国会でなんとか辻褄を合わせた答弁をしてきた者だからこそ、痛切にそう思うのです。

国民の命と暮らしや権利を保障する国家の独立に関わる問題であるからこそ、政治は真剣に、誠心誠意国民に語る真摯さを持つべきです。

マスコミは相も変わらず「安倍総裁の意向に沿った憲法改正推進本部幹部VS石破」的な報道しかしませんが、そのようなつまらないことで議論しているのではありません。担当記者諸兄姉は多少なりとも議論の内容を理解しているのでしょうが、上層部の判断であのような報道になるのでしょうか。とても情けなく、悲しい気持ちにさせられます。

昨日ダイヤモンド社の企画で、レーガン政権からオバマ政権まで国防長官顧問を務められたハーバード大学ケネディ行政大学院初代学長のグレアム・アリソン博士と対談をしたのですが、とてもスリリングかつ有意義な2時間でした。

博士の最新の所論は、以前もご紹介した「米中戦争前夜」(ダイヤモンド社)に述べられており、深い歴史的考察に基づいたとても興味深い一冊です。

「あなたはアベノミクスで幸せになれるか」(市川眞一著・日本経済新聞出版社)も、客観的な視点から今後の日本経済の在り方を論じたもので、多くの示唆を受けました。

10日土曜日が旧陸海軍95式小型乗用車見学会(午前10時半・御殿場観光ホテル)、防衛技術博物館を創る会活動報告会にて講演、その後の懇親会(午前11時・同)。

11日建国記念日は「時事放談」出演(午前6時・TBS系列・収録)、八頭町西御門地区初総会(午前8時・西御門集会所)、郡家殿地区初総会(午前8時半・郡家殿公民館)、建国・紀元祭(聖神社・鳥取市行徳)、山陰新幹線の早期実現を求める松江大会(午後1時・ホテル白鳥・松江市千鳥町)、ビッグツール(株)工場見学並びに懇談会(午後3時・鳥取県日吉津村)、という日程となっています。

地元の聖神社で行われる建国記念の日のお祭りに参加するのは久しぶりです。典雅で清々しい「紀元節の歌」を歌えることを楽しみにしています。

豪雪の被害に遭われた皆様にお見舞い申し上げます。

三連休の方も、休まずお仕事の方も、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

政策コラム執筆者プロフィール
石破茂会長石破 茂 鳥取1区【衆議院議員】
生年月日:昭和32年2月4日
当選回数:11回
学歴:1979年3月 慶應義塾大学法学部卒業
得意な政策分野:安全保障・農林水産・地方創生