石破茂会長石破 茂 です。

あと5日で改元となり、新しい「令和」の時代を迎えます。新帝陛下と新皇后陛下がご健勝でご活動賜り、新時代が平成に続いて戦争のない平和な時代であるように切に願います。

私たちは昭和最後の選挙となった昭和61年の第38回選挙で議席を得たのですが、一期生でもあり、先帝陛下(昭和天皇)のお姿は国会の開会式で見るだけでした。その後病を得られ、昭和63年の後半は毎日ご病状がメディアで報ぜられ、国全体が重苦しい雰囲気に包まれていたことを記憶しています。

昭和最後の日となった64年1月7日土曜日早朝、選挙区での新年会に出席のため夜行特急で倉吉駅に降り立つと、駅のホームには竹下登総理大臣の謹話が流れており、陛下の崩御を知りました。皇居で記帳するため、反対側から来る上りの特急に乗り換え、新大阪で配られた号外を東京までの新幹線車内で何度も読み返しながら、涙が止まらなかったことを思い出します。

その意味では、今回のご生前のご譲位による御代代わりは明るい奉祝ムードの中で行われ、良かったというべきなのでしょう。象徴天皇としてのお務めを全身全霊で果たしてこられた今上陛下の有り難い大御心の賜物と思います。

学生時代に習った宮沢俊義東大教授の「天皇は国事行為のみを行うロボットのような存在」との説とは全く異なる天皇像を体現してこられた今上陛下であればこそ、今回のご生前ご譲位というご決断をなさったのだと畏れ多くも拝察いたします。

21日投開票の衆議院の補欠選挙は、大阪・沖縄ともに自民党敗北の結果となりました。大阪は大阪府知事・大阪市長のクロス選挙で勝利した維新の勢い、沖縄は辺野古への移設反対という特別な事情があったとはいえ、参院選を控えてこれを等閑視してはなりません。

私は知事選・大阪市長選・府議選・市議選の応援に引き続いて大阪12区の応援に出向いたのですが、「都構想反対」を唱えても共感が少なかったのが実感でしたし、沖縄には水月会の秘書団も多く入り、総力戦で戦ったものの、自民党が唱える「辺野古移設が唯一の普天間基地負担軽減の解決策」に共感が得られず、「政府・自民党は沖縄に寄り添っていない」との不信感を持たれてしまったような印象を受けました。

大阪都構想を全面的に否定するというより、これを超える、日本全体の将来を視野に入れた「副首都」的な構想を提示すべきですし、辺野古移設の合理性・正当性を訴えるためにはその前提として、言葉だけではなく行動で沖縄に寄り添う姿勢を目に見える形で示し、それが県民に理解されなくてはならないと考えます。沖縄の戦前・戦後の歴史を深く学ぶとともに、地位協定についても「運用の見直し」ではなく「協定の改定」を打ち出すことを真剣に検討すべき時期を迎えているのではないでしょうか。

さる19日、法相や自民党憲法改正推進本部長などを歴任された保岡興治先生が逝去されました。享年79。私も初当選以来、選挙制度改革や憲法改正などで随分とご指導を賜ってまいりました。

中選挙区時代に唯一の一人区(小選挙区)であった衆議院奄美群島区で徳田虎雄氏と「保徳戦争」と呼ばれた激烈な選挙戦を戦ってこられた先生が唱えられる小選挙区導入論には説得力がありましたし、一昨年の憲法記念日に安倍総裁が「憲法第9条は1項2項を残したままで自衛隊を明記すべき」との論を唱えられた時、私の求めに応じて首相官邸に出向いて自民党議員に直接説明する必要性を安倍総裁に説かれ、「直接党所属議員に説明する機会を設けたい」との言葉を引き出してくださいました。

法律家の緻密さ、人間としての誠実さ、常に青年の志を持って行動された保岡興治先生の、御霊の安らかならんことをひたすらお祈り申し上げます。

19日は本会議も委員会もありませんでしたので、以前から依頼されていた秋田内陸縦貫鉄道の全線開業30周年記念イベントで「鉄道と地方創生」的な講演をしてまいりました。

角館、田沢湖(仙北市)、森吉山、マタギの里(北秋田市)等々沿線には名所も多く、昭和の農山村の雰囲気を残した魅力的な路線で、「乗って残そう〇〇線」という考え方ではなく

「地域を残すために鉄道をいかに活用するか」との発想に立った意欲的な取り組みからは多くの示唆を受けました。あと一週間遅ければ、角館の枝垂桜が見頃になっていたようで、見られなかったのは少し残念なことでした。

10連休は大学卒業以来本当に久しぶりに(新婚旅行以来多分初めて)まとまったオフがとれそうです。オフィスや宿舎の大整理整頓を行うとともに、憲法・現代史・外交・経済など、今まで斜め読みで済ませたまま精読してこなかった何冊かの本をきちんと読んで理解したいと思っております。

「日本人はなぜ戦争へと向かったのか」(NHKスペシャル取材班編著。メディアと民衆・指導者編、外交・陸軍編、果てしなき戦線拡大編の全三巻。新潮文庫)、「私の憲法勉強」(中野好夫著・ちくま学芸文庫)、「日本の少子化百年の迷走 人口をめぐる『静かなる戦争』」(河合雅司著・新潮選書)等々、今から読むのを楽しみにしております。

来週の本欄はお休みさせて頂きます。お休みをとられる方も、連休に関わりなくお仕事の方も、どうかご健勝にてお過ごしくださいませ。

政策コラム執筆者プロフィール
石破茂会長石破 茂 鳥取1区【衆議院議員】
生年月日:昭和32年2月4日
当選回数:11回
学歴:1979年3月 慶應義塾大学法学部卒業
得意な政策分野:安全保障・農林水産・地方創生