八木 哲也です。地元の愛知県豊田市・みよし市の地方新聞「矢作新報」(R3.4.9)に掲載された私のエッセイ「時々刻々 No.999」をご紹介します。
【「時々刻々 No.999」】STEAM教育の推進がカギ
例年より少し早く、今年は三月中旬には桜が咲き始めた。やはり誰もが「花見を堪能したい」と思う。だが時は新型コロナウイルス禍。国も地方自治体も自重を促し、全国的に自由に散策できないことが多かった。新型コロナで多くの行事が自粛になっている。
3月6日、豊田市制70周年記念式典があった。密にならないよう工夫されていた。式典では名誉市民に藤嶋昭氏(元東京理科大学学長)がなられた。藤嶋先生は21人目の名誉市民だが科学者は初めて。素晴らしいことだ。藤嶋先生は光触媒の世界的権威で、文化勲章も受けられている。光触媒の原理は多方面に応用され、経済発展にも大きく寄与する。
私がかつて豊田市議会議員だったころ、議会の一般質問で何度も子供への科学技術教育の充実について質問をした。全国の科学館も20カ所程度は視察した。その成果があったかどうか分からないが、子供たちの科学に対する目を養い、そして未来につなげてほしいと思っていた。
国政に携わってからは「科学技術イノベーション特別委員会」に所属し、自民党内においても同様の会議に参加した。4月には第6期科学技術・イノベーション基本計画が決まる。それに向けて頻繁に議論をしてきた。
新型コロナでは日本の課題があぶりだされた。科学技術・イノベーションを中核とする国家間の覇権争いが激化する中で、日本は後塵を拝した。ワクチンや治験薬の開発が遅れ、デジタル化による共通基盤も不十分だった。同時期に半導体やリチウム電池の生産にも弱みを露呈した。
日本は加速的に取り組まなければならないことばかりだ。そのためには予算の裏付けが必要になる。政府は5年間で研究開発投資の総額を30兆円、官民合わせた総額を120兆円と掲げた。大学での研究には10兆円規模のファンドを創設する。
なによりも大切なことは人材だ。若手研究者や女性研究者の処遇の改善が求められる。さらに先進的にすると同時に、底辺を広げていくことが必要だ。小中学校でのSTEAM教育(科学・技術・ものづくり・芸術・数学の各英語の頭文字)の推進が重要になる。
今回の基本計画で、初めて「Well-being(よりよく生きる)」という言葉が使われた。まだ認知度の少ない言葉だが、今後定着すべき概念と思う。科学技術の進展により、一人ひとりの多様な幸せが実現できる社会にしなければならない。
さて、藤嶋先生の話に戻る。先生は豊田市で子供たちに「藤嶋塾」を開いてくださっている。理科が好きになるように、そのきっかけづくりをされているのだと思う。一度拝聴したことがあるが、まさにSTEAM教育だ。先生の視線の先には、子供たちの中から日本を背負う科学技術者の姿が登場する未来が見えているのであろう。
4月、小学一年生が入学する。子供たちの「なぜ、不思議だ、感動した」そんな思いを大切にした教育に取り組んでほしいと思う。
生年月日:昭和22年8月10日
当選回数:3回
学歴:1972年3月 中央大学理工学部管理工学科卒業
得意な政策分野:経済産業 科学技術・イノベーション 文部科学 地方創生
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