八木哲也八木 哲也です。地元の愛知県豊田市・みよし市の地方新聞「矢作新報」(R3.2.26)に掲載された私のエッセイ「時々刻々 No.993」をご紹介します。

【「時々刻々 No.993」】モノづくり日本の知見いかせ

今年も新年早々から緊急事態宣言を迫られた。1月8日から1ヶ月間、愛知を含む11都府県に発令した。2月に入ると新規感染者数は減ってきたが、重篤者数、治療用ベッド数の逼迫状況の改善は十分とはいえなかった。栃木県を除く10自治体ではさらに1か月間、宣言を延長した。

政府は経済支援策を講じるが、全国民に行き渡るわけではない。倒産・廃業の危機に直面している人達もいる。新型コロナが遠因で、自殺者も前年度より増加傾向との指摘もある。皆さんに難渋な生活をお願いし、申し訳なく思う。 
17日からはついにワクチンの接種が始まったが、これで全てが解決するわけではない。感染した場合の治療薬も大事だ。

いまはニュースもワクチン一色。いかに早く、安定的に海外から買い付けができるかが政策の肝のように映る。日本の製薬会社では、塩野義製薬が今年末までにワクチン製造の見通しを立てたいという。やはり周回遅れの感はぬぐえない。ワクチンの開発は、世界同時スタートのようなものだ。米国、英国が先んじ、中国やロシアも独自開発するなかでなぜ日本だけこんな状況なのか。この検証、説明がほしい。日本は経済大国、術大国だったはずだ。産業政策に失敗はなかったか。ITや製造業もそうだが、政府の責任は重い。

私は自動車部品製造メーカーに勤めていた。品質や工程の管理は人一倍、気にかかる。今回の新型コロナの問題も、こうした観点からみるとくっきりと問題が浮かび上がる。

「この工程で異音・異臭など『いつもと違うこと』があったら、すぐ点検して絶対に次の工程に不良品は流さない」。これが鉄則だ。今回の場合はどうか。PCR検査を徹底し、陰性か陽性かをまず区分。「いつでも、どこでも、何度でも」だ。もちろん感染した人が不良品ということではない。健康に不安が生じた人に万全のケアをし、快方にもっていくことが大事という意味だ。

大相撲では全力士・関係者にPCR検査を実施し、陰性の人だけで初場所に臨んだ。これが正解だと思う。大半を輸入に頼っていたPCR検査試薬について、タカラバイオは国内生産を8倍にするという。遅きに失したが、是としよう。

ワクチン接種は欧米より2か月遅れだ。16歳以上が対象で、全国の自治体で実施する。滞りなく進めるために、河野太郎氏が担当大臣に任命された。輸入から各自治体への配送、接種までの一連の流れは「工程管理」そのものだ。国を挙げた複雑な工程になる。

日本はモノづくりにたけた国だ。これまで世界一の自動車を作り、ロケットを宇宙に飛ばしてきた。緻密で複雑な工程管理をなしえてきたはずだ。ワクチン接種に、こうした知見を生かせないものか。

精密な品質管理や工程管理はデータに基づく。以前この欄で新型コロナの風評に「正しく恐れる」べきだと書いた。「正しく」とは正しいデータを国民全体で共有することを指す。そのうえでの政治判断になる。政権への支持率が低迷するいま、強くそう思う。

政策コラム執筆者プロフィール
八木哲也八木 哲也 愛知11区【衆議院議員】
生年月日:昭和22年8月10日
当選回数:3回
学歴:1972年3月 中央大学理工学部管理工学科卒業
得意な政策分野:経済産業 科学技術・イノベーション 文部科学 地方創生