八木哲也八木 哲也です。地元の愛知県豊田市・みよし市の地方新聞「矢作新報」(H30.2.9)に掲載された私のエッセイ「時々刻々 No.846」をご紹介します。

【「時々刻々 No.846」】安倍首相が所信表明で強調した5つの項目

暦上は大寒の1月20日、その通り大寒波が到来した。
 
第196回通常国会が召集されたのはその2日後の22日だ。小雪が降り始めるなか、国会前で衆・参両院の国会議員が整列し、陛下をお迎えした。
雪舞ふや 議事堂の扉(ひ)の 重く開(あ)く

安倍晋三首相は所信表明演説冒頭、150年前の明治維新に思いをはせた。東京帝国大学総長であった山川健次郎を例に「国の力は人に在り」と語った。開国当時の日本には欧米諸国が迫り「国難」ともいえる状況だった。そんななか、明治という新しい時代が育てた数多の人材が、日本を近代化に導く原動力になった。

首相が演説で強調したのは「働き方改革」「人づくり革命」「生産性革命」「地方創生」「外交・安全保障」の5項目。
 
いま日本は、少子化・高齢化による人口減少という「国難」に直面している。そんななか、演説の初めに「働き方改革」を持ってきたのは個人的には解せないが、今国会では労働基準法制定以来、70年ぶりの大改革をする。並々ならぬ意欲の表れだろう。「非正規」という言葉を、この国から一掃したいという首相には強い思いがある。

「人づくり革命」については、人口減少の中で人生百年時代をむかえる。高齢者も若者も安心できる「全世代型」の社会保障制度を構築することが急務だ。介護や子育ての不安を解消し、幼児教育や高等教育を無償化する。リカレント教育の充実もある。経済的支援も大切だが、質の向上をしっかり検証しなければ。

次に「生産性革命」。まず中小・小規模事業者の生産性向上について話した。そこで働く人たちは全体の70%にのぼる。その人たちが元気にならなければ、デフレ脱却はできない。

この下りで、首相は豊田佐吉を引き合いに出した。「研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし」。小規模事業者が大企業へと成長した過程を語った。その一文に「愛知に生まれ」「自動化への挑戦」とあった。議場の議員にはあらかじめ原稿が配布されている。原稿を眺め、演説を聞きながら「あれ?」と思った。「愛知」ではなく「静岡・湖西市」だろう。「自動化」ではなく「自働化」のはずだ。原稿を起草した官僚は、もっとしっかり調べてほしい。

最後に首相が憲法改正について言及したことについて触れておく。首相は「五十年、百年先の未来を見据えた国創りを行う。議論を深め、前に進めていくことを期待しています」と淡々と語った。本会議前に開いた自民党両院議員総会でも首相は憲法について述べた。「我が党は結党以来、憲法改正を党是として掲げてきた。いよいよ実現する時を迎えている。その責任をはたしていこう」。その言葉は力強く、いつになく気合が入っていると感じた。

本会議が終わる頃、外は吹雪になっていた。議事堂も白一色に覆われた。私が思い出したのは、議場での陛下の言葉だ。「国権の最高機関として、その使命を十分に果たし、国民の信託に応えることを切に希望します」。我々の責任は重い。

政策コラム執筆者プロフィール
八木哲也八木 哲也 愛知11区【衆議院議員】
生年月日:昭和22年8月10日
当選回数:3回
学歴:1972年3月 中央大学理工学部管理工学科卒業
得意な政策分野:経済産業 科学技術・イノベーション 文部科学 地方創生